～～感染症の侵入は水際で私が食い止める～～
＊小牧聖子さんの場合

 

ここは、関西国際空港。

 

「アフリカ方面、中南米方面から到着された方は、質問表を提出してください。
また、旅行中健康状態に異常がありましたら・・・」

 

と日本語と英語のアナウンスが繰り返される中、
海外から到着したばかりの乗客たちが、
小牧さんたちが待つ検疫ブースに向かって歩いてくる。

 

小牧聖子さんは関西国際空港の検疫所で検疫官として働くナース。
危険な感染症の侵入を水際で食い止めるのが仕事だ。

 

サームグラフィで体温の高い乗客がいないかに注意しながら、
乗客から機内で記入してもらった質問票を受け取ると、
彼女は素早く目を走らせた。

 

質問票はWHO （世界保健機関）が指定する感染症流行地域からの
便の中で必ず配られるもので、
下痢、腹痛、発熱などの症状が旅行中になかったかどうかなどの
チェック項目が並んでる。

 

この質問票をもとに、現在の体調などを尋ね、
体調不良の疑いのある乗客は医師のいる健康相談室に案内する。

 

そこで小牧さんは医師の診察を介助し、
検温、採血や血圧などの検査も行う。

 

「お客様の中には検疫で捕まるとすぐに入院させられるんじゃないかと思って
正直に申告しない方もいます。
でも、ＳＡＲＳ（重症急性呼吸器症候群）などの一類感染症以外は、
即入院なんてことはありませんし、
むしろ医師の診察、検査も受けられて安心することができるので、
ちゃんと質問票を記入して欲しいですね」。

 

 

乗客の多くは小牧さんをナースだと思っていないかもしれない。

 

胸に「看護師」のバッジはつけていても、ほかの検疫官と同じように、
いかにも「空港職員」という感じのちょっと凛々しいユニフォームを着ているからだ。

 

「白衣じゃないと説得力がないみたいで、
わざと知識を試すような質問をされるお客様もいます」。

 

高校生の時テレビで海外医療支援に従事する人たちのドキュメンタリーを見て、
いつか私もと思い、そのため役立つ仕事としてナースを志した。

 

検疫官の募集を知ったときにも、空港の検疫所ならば海外医療ボランティアに
役立つ感染症や語学の勉強ができると思ったのが応募した理由だった。

 

勤務は猛威をふるっていたＳＡＲＳ対策のために、
厚生労働省が全国の空港検疫所の大幅増員を決定したときだ。

 

その中の関西空港検疫所で採用された6名の看護師の１人だった。
着任していきなりマスクとゴーグルを着用して働かなければならなかった。

 

入念な検疫チェックを行うために、
休憩時間も満足にとれないような状態がしばらく続いた。

 

ＳＡＲＳのように以前はなかった感染症が新たに現れることもある。
天然とうのようになくなったと思われていたのに、
テロ対策を含めて警戒が必要な感染症もある。

 

検疫官の仕事の重要性は高まっている。

 

「国内ではほとんど見られない感染症を食い止められたら、それが一番嬉しい」。

 

小牧さんは強い使命感をストレートに表した。

 

以上突撃インタビューでした。

 

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